2013年6月21日金曜日

遥か昔に結ばれた猫たちの秘密の掟:日常の光景



いつも通る住宅街にはネコ屋敷がある。(その近くにはゴミ屋敷もある

いつもたいてい5~6匹の猫たちが玄関前にたむろしている。
飼い猫なのか野良猫なのかはわからないが、ここのおうちの奥さんが餌をあげているところを見たことがあるので、どちらにしても食う寝る状態で暮らしていることには違いないだろう。

考えてみればネコは、犬や鳥や魚のように紐で繋がれたり、籠に入れられたり、狭い水槽で泳がされたりすることもなく、自由に動き回れる数少ないペットのひとつだ。
いや、唯一と言っても過言ではないだろう。
おそらくペット界では特別な位置にいるはずだ。

逃げようと思えば逃げられる身体能力を持ちながら、それでも自由行動を許されているのは、それもこれも、彼らの特性のなせる業である。
その特性とは、以下の条件をクリアしていることだ。
  1. 吼えない(恐怖を与えない)
  2. 噛まない(危害を加えない)
  3. 逃げない
色々と思い浮かべてみるが、この条件を全て満たすペットはやはりネコしか思い当たらない。
1と2はクリアするのも多いが、たいてい3でアウトだ。


クワガタや金魚は一度放ったら果てしなく戻ってこないだろう

そう考えるとネコは、奇跡のペットだ。
出来すぎている。

・・怪しい

もしかしたら彼らは、本当は犬のように吼えるし、蛇のように噛むし、果てしなく逃げたいのに、この特権を得るために本来の姿を隠しているのかもしれない。
おそらく遥か昔にこの条件を発見し得とくしたのだ。



遠い昔、月の明かりに照らされた廃墟に猫たちは集まった。
白いネコ、黒いネコ、三毛猫・・色々な種類のネコがいたが、総じて唄と踊りがうまくスタイルもいい。
彼らが集まるとどこからか決まって美しい旋律が流れ、それにのって猫たちの秘密の集会が始まる。

キャッチ

いつからか、偶然この集まりを目撃した人間の間でこう呼ばれるようになっていた。
今では猫たちもこの呼び名を使って集まっている。

全員集合したところで、一段高い場所に月を背負ってシルエットになったボスが現れた。
猫たちは雑談をやめボスを仰ぎ見る。
いつもながらに迫力のある姿だ。

皆のもの、よく集まった
さっそくキャッツ・・いや、キャッチを始めよう

ボスはいつもキャッチとうまく言えず、必ずキャッツと言ってしまう。
後に有名な劇団がこのような名前の出し物をやったが、それはここからきたものだ。

ボスは皆を見回すと一言こう言った。

吼えず、噛まず、逃げず



・・・

・・・はあ?

意味がわからずポカンと口をあけている彼らにボスは厳かに説明を始めた。
ボス曰く、

これからは唄って踊っているだけでは食べていけない。人間を利用するのだ。
幸運にも我らはかわいい容姿をもっている。
先に言ったルールを守れば人間はおのずと我らに食べ物を与え、同時に自由も得られるだろう。

本来、何事にもあまりやる気のない彼らはこの言葉にすぐのった。
さっそく翌日から、今まで行っていた暴力行為(吼える・噛む)を封印し、猫なで声と猫かぶりで人間に取り入ったのだ。

時がたつにつれ、その行為は実を結び、だんだんと今の地位を獲得していった。
すでにあのころの立ち上げメンバーはこの世を去ったが、その掟はいつからか、

キャッチの掟

と呼ばれ今でも脈々と彼らの間に受け継がれている。

現代においても、定例キャッチはしっかりと開催され、地区の代表による報告および掟遵守の徹底が呼びかけられていた。
さらに、癒し系ブームも利用し、動画サイトなどでのPRも忘れない。

猫たちも必死だ

なぜなら、もしバレてしまっては、ご先祖さまたちのように唄って踊って食べていかなくてはならなくなる。
しかし今更そうなっても、引退して長いことたった今となっては、そのノウハウを教えてくれる先輩もいない。
自分たちでやろうにも、生まれてこのかた食う寝る生活ですっかり体もなまり、くびれもなくなった。何曲も踊り続ける体力にも自信はない。
もはや後戻りはできないのだ。

果たしてあのときのボスの判断は正しかったのか・・

今や猫たちは、かわいい外見とは裏腹に、必死に猫かぶりのウデを磨いて自分たちの特権を守っている。

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