雪男は向こうからやって来た(角幡唯介)
雪男についてはまったく興味のなかった著者が、ひょんなことから雪男の捜索隊に参加。
未確認生物は信じられないという気持ちと、メンバーになった以上は無碍に否定できないという気持ちの間で葛藤しながら、関係者の取材と現地での捜索活動を続けていきます。
私自身は、断言はもちろんできませんが、「いない」派(いたらいいなとは思う)なので、この著者と同じように最初は疑いの目をもって読んでいきました。
しかし、そういう方面の専門家ではない名の知れた登山家たちの目撃談もいくつかあり、雪男かどうかはともかく、謎の二足歩行らしき生物がけっこう目撃されていることを知りました。
雪男の存在を信じる山男たちの熱い想いや、現地のテント生活の様子、これまでの雪男に纏わる逸話など、結果云々だけでなく、そこに行き着くまでの行程や関係者の体験談も豊富で読み応えがあります。
ヒルが棲む森の中を進むくだりなどは、私も以前ネパールのトレッキングで体験しているので、その時のことを思い出し背中がムズムズしてきましたが、そんな状況なども、ユーモア溢れる文章で綴られているので、思わず声を出して笑ってしまいました。
ちなみに読み始めてすぐ、著者が「チベット奥地のツアンポーの未踏地域を探検した」ということが書かれており、もしかして、以前読んだ「空白の五マイル」を書いた人かなと思ったので、巻末のプロフィールを見たところやっぱりそうでした。
元新聞記者なだけあって、文章もわかりやすくぐいぐい引き込まれます。
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第8回開高賞、第42回大宅賞W受賞後第1作!
【内容】
いったいソイツは何なのだ?なんでそんなに探すのだ?二〇〇八年十月二二日、われとわが目を疑った人は、日本中に大勢いたに違いない。「ヒマラヤに雪男?捜索隊が足跡撮影、隊長は“確信”」の見出しとともに、雪男のものとされる足跡の写真が新聞を飾った。まさに、それを撮った捜索隊に加わり、かつて雪男を目撃したという人々を丹念に取材した著者が、厳しい現場に再び独りで臨んでえぐり取った、雪男探しをめぐる一点の鋭い真実とは?-。
【目次】
第1章 捜索への招待(二〇〇八年三月一七日・日本)/第2章 シプトンの足跡/第3章 キャラバン(二〇〇八年八月一七日・カトマンズ)/第4章 登山家芳野満彦の見た雪男/第5章 密林(二〇〇八年八月二六日・アルチェ)/第6章 隊長高橋好輝の信じた雪男/第7章 捜索(二〇〇八年八月三〇日・タレジャ谷)/第8章 冒険家鈴木紀夫だけが知っている雪男/第9章 撤収(二〇〇八年九月二六日・コーナボン谷)/第10章 雪男単独捜索(二〇〇八年一〇月一五日・ポカラ)
【著者情報】
角幡唯介(カクハタユウスケ)
1976年北海道芦別市生まれ。早稲田大学政治経済学部卒業、同大探検部OB。2001年、ヨットで太平洋を航海後、ニューギニア島トリコラ北壁初登。02~03年、長らく謎の川とされてきたチベット、ヤル・ツアンポー川峡谷の未踏査部を単独で探検し、ほぼ全容を解明。03年朝日新聞社入社、08年同退社、同年ネパール雪男捜索隊隊員。10年『空白の五マイル チベット、世界最大のツアンポー峡谷に挑む』で第八回開高健ノンフィクション賞、11年同作品で第四二回大宅壮一ノンフィクション賞、第一回梅棹忠夫・山と探検文学賞を受賞(「BOOK」データベースより)
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