人は原子、世界は物理法則で動く 社会物理学で読み解く人間行動(マーク・ブキャナン)
なぜ人種差別や大量虐殺、民族間の紛争が起きるのか、なぜ明らかに間違っている集団の行動や思想に取り込まれてしまうのか、なぜ金持ちはより金持ちになるのかなど、そのメカニズムを物理学的に解明していくのですが、これが思わず「なるほど」と唸ってしまうほどにいちいち納得させられました。
中にはゲーム理論でもよく出てくる「最後通牒ゲーム」「共有地の悲劇」「マタイ効果」などとも絡められており、既知の理論と著者の理論とのあわせ技で新たな考え方(物の見方)を学んだ感じです。
この本で初めて知ったのですが、「カラー・ゲーム」という実験はとても興味深いものでした。
これは、コンピューターを用いたシミュレーションなのですが、生まれながらにランダムに色分けされた複数の人間(色以外に違いは何もない)が、色々な色が交じり合う集団の中でどのように行動していくかというのを見るものです。
その経過と結果はまさに、人種・民族間問題などに通じる自分(の所属している集団)とは違う種類の人間に抱く集団心理を見事に表していました。
この心理は、普段の平和な社会生活の中ではほとんど表に表れませんが、その社会の規制や均衡が崩れそこにいる人間の心が原始的な状態になったとき、ある影響力のある人物が「自分たちと違う色の集団を排除しろ」と喚起するなどの「きっかけ」与えると、それまでは考えられなかった恐ろしい暴挙に出てしまえるということだそうです。
たとえ昨日まで、違う集団に属する隣人と個人的に仲良しだったとしても、一旦上記のような非常事態に陥ると、その隣人をも虐殺してしまう心理になる・・
考えただけでも恐ろしいですが、実際に世界ではこのようなことがいくつも起きています。
普段は自己の抑制がしっかりできていると思っている人でも、この集団のパターンに巻き込まれると、いつの間にか今まで知らなかった自分が現れてくるかもしれません。
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【内容】
人間を原子と考えると世界はこんなにわかりやすい!どうして金持ちはさらに金持ちになるのか、人種差別や少子化はなぜ起こるのか…これまで説明がつかなかった難問を新たな視点で解き明かす。
【目次】
第1章 人間ではなく、パターンを考える/第2章 世界が複雑なのは人間が複雑だから?/第3章 人間は本当に合理的なのか/第4章 適応する原子/第5章 模倣する原子/第6章 協調する原子/第7章 民族はなぜ憎しみあうのか/第8章 金持ちがさらに豊かになる理由/第9章 過去への前進
【著者情報】
ブキャナン,マーク(Buchanan,Mark)
1961年クリーブランド生まれ。物理学で博士号を取得。『ネイチャー』、『ニューサイエンティスト』等の編集者を経て、現在フリーのサイエンスライター(「BOOK」データベースより)
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