2日目
姫路城小話 その二:主のいない大天守
姫路城の築城には、長い歳月と膨大な人員がかかったことはすでに書いたとおり。普通なら、そんな手間隙かけて作った城で、まさに天下をとった者にしか見られない景色を眼下に眺めながら暮らしたいと思うだろう。
ところが、実際は、主である殿様はそんなに頻繁に訪れなかった。
なぜなら、お城の中の階段は、敵が攻めてきても容易には登れないように急角度で作られいて、姫路城の大天守といえば、建物だけで31.5mもの高さがある。
当時はエレベーターなるものは当然なかったから、上に行くにはその急な階段を登らなければならない。そして登ったら下りなければならない。
にもかかわらず、殿様は足腰が弱かった。
幼い頃から過保護に育てられ、どこかに移動するにも馬だ籠だと自分の足で歩くことが少なかった。
そのため、城のてっぺんまで行きたい気持ちはあるものの、とても体がついていかなかったのである。
しかし、それでも天下とりの景色をどうしても見たいときはがんばって登ったらしい。
恐らくその内の何回かは、頂上までたどりつけずにやむなく下山ということもあっただろう。その時のお付の人の苦労が目に浮かぶ。
そんな主不在の大天守には、シフト勤務で24時間警備にあたるたった5~6人の侍がいただけだった。
まったくもってもったいない。
では、そのひ弱な殿様はどこにいたのかというと、かつて、大天守の麓に建っていた平屋の御殿で暮らしていたという。
現在、その建物はもうないのだが、数年前、熊本城の御殿が復元されたことから、姫路の御殿もにわかに注目されたことがある。
熊本城の復元を知った姫路市民から、
じゃあうちも
と、御殿の復元に対する声があがったのだ。
しかし、熊本城の復元費用に50億円もかかったことが判明。
さらに姫路城では、大天守の修復にもお金がかかるということで、
そんな金どこにあるんじゃ
と反対意見が続出。
姫路市民としては、熊本城は復元したのに・・という複雑な心境をかかえることになってしまった。
しかしそんな折、我らの姫路城が世界遺産に認定。
そのため、
世界遺産の方が(御殿復元なんかより)すごいじゃん
と、モヤモヤしていた熊本城に対する気持ちも落ち着ついた。
これにより御殿の復元の話は一旦棚上げとなっている。
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でもこれでもし、熊本城も世界遺産になったらまた御殿再建の話が出てくるのでしょうか。
私としては、足腰の弱い殿様が住んでいた建物も見てみたい気がします。
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