家の近所にお気に入りの小さな木工所がある。
そこの入り口には、
ご自由にお持ち帰りくださいコーナー
が設置され、廃材となったらしい板や棒などが置いてあるのだが、そこを通るたびに、地域住民との繋がりが見える心温まる試みだといつも感心していた。
しかし、このようなコーナーは、けっこう色々なところで見かける。
にもかかわらず、何がお気に入りなのかというと、廃材に混じって面白いものがときどき置いてあるからだ。
私が見かけた品の一部を挙げてみよう。
- ジーンズ(タグ付きの新品)
- 二分の一サイズくらいの大きな小鹿の置物(毛並も再現)
- マネキン(トルソー)×2
- 枯れた花の植木鉢
- 陶器のセット(箱入り)
などなど。
私にとっては、毎朝ここを通るのが面白くて仕方がない。
何の変哲もない工房の前に、突如として鹿やマネキンが現れるのだ!
これらはいったいどこからやってくるのだろうか?
木工所の作業工程の中から出された廃材とはとても思えない。
近所の人の置き土産か?
違うな・・
自らやってきたに違いない。
本来ならゴミとして出される運命だったが、リサイクル品としてもうひと花咲かせたくなったのだ。(もしくは例のゴミ屋敷から脱出してきたか?)
近くにリサイクル屋さんもあるが、その場合は持ち主が運び込む必要があり、単独での潜入ば難しい。
恐らく自由に身を置ける数少ない場所として口コミで広がったのだ。
処分されそうな危険を感じた彼らは、人目を盗んで夜な夜な工房に集まり次の持ち主を待っている。
工房の主人もそれは承知しており、代々彼らに場所を提供してきた。
なぜなら、何代も前の主人に、こうするに至った何かがあったからだ。
それは、遠い昔、工房の前に捨て置かれた木の人形を拾ったことから始まった。
ある朝、おじいさん(主人)は、店の軒先に放置された小さな人形を拾った。
恐らく元の持ち主が、必要なくなったが捨てるのも忍びなくここに置いていったものだろう。
おじいさんは不憫に思い、丁寧に修復して服も着せ替え、自分の作業机の片隅に飾っておいた。
ある日、大量の注文が舞い込み何日も徹夜で作業をしていたおじいさんは、体を壊して倒れてしまった。
明日は締切りなのに、これでは到底間に合わない
それを見た人形は、こっそり夜中に動き出し残りの作業を終わらせた。
翌朝おじいさんが工房に行ってみると、注文の品がきちんと仕上がり床に置かれていた。
おじいさんはとても驚き不思議に思ったが、品物の傍らに倒れている人形を見てすべてを悟った。
それ以来この家の主人は、助けを求める「もの」たちに手を差し伸べるようになったのだ。
というわけで、鹿やマネキンたちもここにやってきたのである。
どうかいい持ち主にめぐり合えますように・・
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