2013年12月13日金曜日

冷えた関係が終わりを迎えるとき:日常の光景

ひさびさの、完全自己満足型空想劇「日常の光景」シリーズです。
これは、日常生活の中で実際に体験した出来事から空想(思い込み・勘違い)を広げ、勝手に頭の中で物語を作って楽しむという、読んでる人がどう思おうと一切関係ない完全自己満足の個人的趣味です。

今まで掲載したこの小話の中で・・というか全体の記事の中でも「道に落ちている10円玉の裏にある陰謀」が長期に渡ってアクセスが多いのですが、個人的には「遥か昔に結ばれた猫たちの秘密の掟」とか「ゴミ屋敷オーナーの苦悩・・仲間との絆、永遠に」とか、今回の話しも結構お気に入りです。

*****




あれは、まだまだ残暑が続く10月初旬のことだった。

ついに彼との別れのときがきた。
彼とはふた夏を共にすごし、決して長い付き合いではないが、私にとってはなくてはならない存在だった。

強い日差しがサンサンと照りつける真夏日、台風が来て蒸し暑いにもかかわらず窓が開けられない日、昼の熱気が冷めやらぬ熱帯夜・・・
暑さの苦手な私にとって拷問のような日々も、彼がいてくれたお陰で乗り切ることができていた。

そんな頼りがいのある彼が、この夏の役目も終わったと言わんばかりの猛暑が過ぎ去ったタイミングで、まるで眠るように天に召されてしまったのだ。


彼の名前は、

長野 諏訪(ながの すわ)




大手電機メーカーからの出向者だ。
各家庭や施設にへばりつき、夏は涼しく、冬は暖かく、自分が担当する空間を快適に保つのが役目。
そういった意味で、彼は見事に本分を全うしてくれた。

恐らく彼は、学校を卒業後この会社に就職し、新人研修を経た後この家に配属されたのだろう。
他の多くの同期と同様、一度配属が決まれば本社に戻ることはほぼ叶わない

出向前夜、明日から各地へ散らばる同期たちと共に、永遠の別れとなる最後の飲み会に繰り出したはずだ。




おい諏訪、お前どこ行くんだ?

僕は単身者用の小さな部屋だよ。お前は?

オレは大型ショッピングセンター。一番きつい食品売り場だぜ。

そっかー。お前、ラグビーやってたしガタイいいもんなぁ。がんばれよ!

おいおい、そんな人ごとみたいにいうなよ~




やはり体育会系は大型施設にまわされるのだろう。
こんな感じでその夜は大いに盛り上がり、翌朝、それぞれの持ち場へドナドナのごとく運ばれていった。

彼がここにきてから恐らく10年。
それが長いのか短いのか予想通りなのかはわからないが、今までの同居者たちを快適に過ごさせてきたことには変わらない。
そしてなんの因果か、私の代で力尽きたのだ。

文句も言わずただひたすらに働いてきた彼の最期を看取れたことを誇りに思う。
あとは後輩に任せて、天国でゆっくり休んでくれたまえ。


そして後日、新人の担当者が着任した。
名前は、

切味 良杉(きれあじ よすぎ)




先任の諏訪とはライバル会社にあたる先から派遣されてきた。
諏訪よりひとまわり大きかったため、隣り合うカーテンレールを若干切断しての設置だった。
ガタイもいいが、なにより若いため、始動早々旺盛な働き振りをみせてくれた。
猛然とファンをまわし、ものの数分でこちらの希望温度にもっていってくれる。
さらに諏訪のころより進化したテクノロジーで、いろいろなスキルを身につけているのも頼もしい。

君とは仲良くなれそうだ

これから何年お世話になるかわからないがよろしく頼むぞ。


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