2013年7月9日火曜日

蝉時雨・・もしも人間が一週間の人生だったら:日常の光景

今朝、今年初の蝉の音を聞いた。
蝉は何年も土の中にいて外に出て鳴くのはほんの1週間ほどだという。
人間基準でいうと短い一生だと思うが、蝉からすればそれが人間で言うところの80年くらいに相当するのだろう。

これがもし、人間だったらどうだろうか。
蝉のように生まれて、地上に出てから一週間の人生だったら・・・



1日目【0~12歳】
いよいよ夏の到来だ。
梅雨も明け、一気に暑くなってきた。
ある日の早朝、長年土の中でこの日を待っていた人間たちが次々と地上に這い出し、たった一週間の人生が始まった。



太陽の明るさに目が慣れるまで若干時間がかかったが、時が経つにつれどんどん成長し、半日もしないうちに元気に走り回れるようになった。

あたりには豊かな原生林が広がり、動物たちの鳴き声もする。
さらに探検すると、近くには川が流れ、そのそばに古びた小屋が建っているのを発見した。
どうやら先人たちが建てたものらしい。

中に入ってみると、槍や弓、竿などこれからの生活に必要なものが一通り揃っていた。
壁にはその使い方が図式で描かれており、小さな子供でもなんとなく理解できた。

さっそくその道具を手に取り、みんなで食料の確保に出かけることにした。
まずは腹ごしらえだ。
半分遊びながら思い切り森の中を駆け巡った。

日が暮れるころみんな小屋に戻ってきたが、この日は、果物や木の実くらいしか採れなかった。
それでも初めて食べる甘く熟れた果物や香ばしい木の実はこの上なく美味しく、夜はお腹いっぱいで眠ることができた。



2日目【12~24歳】
翌朝起きると体はさらに成長していた。
昨日よりも視界が開け、走るのも早くなった。
何人かは森へ、何人かは川へ食料を捕りに行った。
森の中を獲物を追って走り回るのも、竿を放り出して川で魚と格闘するのも何もかもが楽しい。
その間にもどんどん背が伸び、帰るころにはひとまわりもふたまわりも大きくなっていた。
昨日とは打って変わって、小動物や魚もたくさん持ち帰ることができた。



3日目【24~36歳】
すっかり成人の体になり、何をするにも最高の力を発揮することができた。
狩もチームを組み、今までにない大物も捕らえることができた。
そしてあちこちで恋も芽生えた。
結婚しやがて子供が生まれると、大切に葉にくるみ土にそっと埋める。
生きている間に会うことはできないが、何年後かにきっと元気に地上に出てくるように願いを込めた。



4日目【36~48歳】
今後を考え、まだ体力のある午前中に大物の獲物を確保し、果物なども小屋の片隅に備蓄した。
午後も引き続き食料の調達に出かけたが、だんだんと体が重くなり長い時間走ることができなくなってきた。
それでもたくさんの食べ物が集まり、これから死ぬまでの間の蓄えは十分に用意できた。
夜はみんなで火を囲んで残りの人生について語りあった。



5日目【48~60歳】
午前中から、来年地中から出てくる次の子供たちのために家の修復や道具の整備などを始めた。
限られた地上での一週間を思い切り生きてほしいと願いを込めながら、果物のたくさん採れる木の場所や、毒のある植物のことも書き残しておいた。
だんだんと筋力も弱くなり、皺も増えた。
人によっては体の不調を訴える者も出始めた。



6日目【60~72歳】
今日からは、みんなそれぞれ好きなように過ごすことにした。
若い頃、みんなでがんばって集めた食べ物は十分にあるので、なんの心配もなく残りの時間を送ることができる。
森の中を散歩するのもよし、お弁当をもってピクニックをするのもよし、川原で日向ぼっこするのもよし。
数日前に比べれば体の自由はなかなかきかなくなったが、みんな思い思いの時間をのんびりと楽しんでいた。
しかし午後になると、だんだんと動かない者も出てきて、さらにはそのまま亡くなる仲間が出始めた。
いよいよ人生最後の時がやってきたのだ。



7日目【72~84歳】
すでに亡くなった者もあったが、他の元気な仲間たちは日の当たる気持ちの良い川辺で思い出話に花を咲かせていた。
一緒に狩に行って獲物を捕まえたこと、川で泳いだこと、喧嘩したこと・・
もうすぐお別れする仲間たちと残りの時間を惜しむように語らった。
そして、そうしている間にも、ひとり、またひとりと静かに息をひきとっていった。
日付が変わるころにはもうほとんどの仲間が息絶えた。



8日目【84~96歳】
ここまで残ったのは、たった1人だった。
しかし彼はもう動けない。
木漏れ日が差し込む森の中で静かに横たわり、終わりの時を待っていた。
ぼんやりと川のせせらぎを聞きながら、薄れ行く意識の中で今までの人生を振り返る。
仲間とともに過ごしたこの一週間は、毎日がとても楽しく充実していた。
自分だけこんなに長生きしたが、最後に残ったのが自分でよかったとも思う。
誰もいなくなってからの時間はとても長く寂しかったからだ。
もうすぐ自分も仲間たちのもとへ行ける・・そう思うととても安らいだ気持ちになった。
今年も賑やかな夏が終わろうとしていた。




この夏セミを見つけたら、今何日目くらいかなと想像してみようと思う。


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